コーヒーとカフェインと健康の関係。「1日3〜5杯程度」が鍵かもしれないという研究

coffee_003

コーヒーが糖尿病や肝臓、がん、脳に与える影響

心臓や寿命との関係に続いて、今回の論文では、糖尿病や肝臓の病気、がん、そして脳やメンタルヘルスとの関係についても、多くの研究がまとめられています。コーヒーが体のさまざまな部分にどのように関わっているのかを知るうえで、どれも見逃せないポイントです。

まず、2型糖尿病との関係についてです。複数の大規模な追跡研究では、コーヒーを日常的に飲む人ほど、2型糖尿病を発症するリスクが低い傾向が一貫して報告されています。興味深いのは、この傾向がカフェイン入りのコーヒーだけでなく、カフェインを抜いたデカフェコーヒーでも見られている点です。カフェインには短期的に血糖値やインスリンの反応を変化させる可能性がある一方で、長期的に見たときには、コーヒーに含まれるポリフェノールやマグネシウムなど、カフェイン以外の成分が血糖代謝を支えているのではないかと考えられています。

肝臓との関わりについては、よりはっきりした傾向が示されています。これまでの研究をまとめると、コーヒーをよく飲む人ほど、肝硬変やアルコール性・非アルコール性の肝疾患、さらには肝細胞がんのリスクが低いという結果が、さまざまな集団で報告されています。また、血液検査で測定される肝機能の指標が、コーヒーを飲む人では良好であるというデータもあり、日常的なコーヒー習慣が肝臓を守る方向に働いている可能性が示唆されています。

がんについては、「コーヒーを飲むとがんになりやすくなるのでは」という不安を持つ人もいますが、今回の論文の結論はそのイメージとは少し異なります。これまでの疫学研究を総合すると、コーヒーが多くのがんのリスクを明確に高めるという証拠は乏しく、むしろ肝がんや子宮体がんなどでは、コーヒー摂取量が多い人ほどリスクが低い傾向が報告されています。一部のがんについては結果が一定していない領域もありますが、「コーヒー=がんリスクの大きな原因」とみなすのは現時点では妥当ではなく、少なくとも多くのがんに関しては、大きな悪影響は確認されていないと整理されています。

脳やメンタルとの関係も、この論文が取り上げている重要なテーマです。パーキンソン病については、コーヒーやカフェインの摂取量が多い人ほど、発症リスクが低い傾向が比較的一貫して示されており、神経変性疾患との関連が注目されています。また、うつ病や自殺リスクについても、適度なコーヒー摂取が低いリスクと結びついているという報告がいくつか紹介されています。

このように、コーヒーと糖尿病や肝臓病、いくつかのがん、そして脳の病気との関係を総合して見ると、適量のコーヒー摂取はそれらの病気に対するリスクが低い傾向と関連していることが示唆されています。ただし、それでもやはり飲み方や体質によっては注意が必要な場面もあります。
続いては、コーヒーの良い面だけでなく、睡眠や不安、妊娠中の安全性、高用量でのリスクといった気を付けておきたいポイントについて整理していきます。

コーヒーを飲むときに気を付けたいこと

ここまで見てきたように、コーヒーは適切な範囲であれば健康面でプラスに働く可能性がありますが、その一方で、気を付けておきたい側面もあります。今回の論文でも、睡眠や不安、妊娠中の影響、そして非常に多い量をとったときのリスクについては、はっきりと注意が促されています。

まず、コーヒーと睡眠との関係です。コーヒーの主成分であるカフェインには、眠気を抑える作用がある一方で、夕方以降に多くとると、寝つきが悪くなったり睡眠の質が下がったりすることが報告されています。どの程度影響を受けるかには個人差がありますが、日頃から眠りが浅いと感じている人ほど、午後から遅い時間のコーヒーは控えめにした方が安心です。

また、カフェインは、量が多い場合(目安として1回200mg超、または1日400mg超)や体質的に敏感な人では、不安感が強まることがあります。とくに不安障害などがある場合は少量でも影響が出ることがあるため、上限の数字よりも、症状(動悸・不安・眠れない等)が出ない範囲を優先することが重要です。

妊娠中のカフェイン摂取については、赤ちゃんの出生体重の低下や、妊娠の経過に影響する可能性を示した研究があります。今回の論文でも、安全を最優先するなら妊娠中は1日200mgまでに抑えることが望ましいとまとめられています。これはドリップコーヒーに換算すると、おおよそ1〜2杯が目安です。

さらに、多量のカフェインを一度にとると、中毒症状を起こす危険もあります。錠剤や高濃度のエナジードリンクを組み合わせて大量に摂取すると、動悸や不整脈、重い場合は命に関わるケースも報告されています。ただし、通常のコーヒーを数杯飲む程度で問題になることはまずないと考えてよいでしょう。

自分に合ったコーヒーとの付き合い方を見つける

ここまで見てきた研究結果を総合すると、コーヒーは多くの成人にとって、日常生活に取り入れやすい健康面でのメリットを期待できる飲み物だと言えそうです。ただし、その前提には量や体質といった条件があります。

論文で紹介されている大規模な追跡研究では、心血管疾患や全死亡との関係を評価する際に、1日あたりおおよそ3〜5杯程度のコーヒー摂取が一つの目安になっていました。
コーヒーの量に関する研究はさまざまありますが、おおむね1日あたり3杯前後とされていることが多く、この論文でもその傾向が示唆されています。

コーヒーは老化に関係する?コーヒーと人の研究から見えた寿命・健康寿命への影響

カフェインの安全性評価では、一般的な成人では1日400mgまでであれば健康上の問題が生じる可能性は低いとされています。
ドリップコーヒー1杯に含まれるカフェインはおおよそ80〜100mg前後とされるため、コーヒー3〜5杯という量は、この400mgというラインとだいたい重なる範囲です。

一方で、妊娠中は同じ基準は当てはまりません。カフェインが体内に長く残りやすく、胎児にも影響するため、今回のレビューでは妊娠中のカフェイン摂取は1日200mgまでに抑えることが望ましいと結論づけています。
ドリップコーヒーで考えると、1〜2杯程度が目安です。

そして何より大切なのは、同じ量を飲んでも、効果や感じ方は人によって大きく違うという点です。
3杯飲んでもよく眠れる人もいれば、1杯でも動悸がしたり、夜に眠れなくなったりする人もいます。そうしたサインが続く場合は、その人にとっては量が多すぎる、あるいは飲む時間帯が遅すぎる可能性があるため注意しましょう。

研究が示す「1日3〜5杯」「カフェイン400mgまで」「妊娠中は200mgまで」といった数字は、あくまで多くの人を平均して見たときの目安です。結局は、自分の体調や睡眠の質、不安感の出やすさなどを観察しながら、量やタイミングを少しずつ調整していくことが最も大切といえるでしょう。

コーヒーをやめるか続けるか、という二択ではなく、自分の体と相談しながら無理のない範囲で付き合い方を整えていく。そのときに、今回のような研究の知見が判断の一つのヒントになるかもしれません。

  • Pages:
  • 1
  • 2