断続的断食(インターミッテントファスティング)は、「何を食べるか」ではなく「食べない時間をつくる」ことで、体の状態を整えようとする考え方です。ここ数年、断続的断食は食事法やダイエット法として知られるだけでなく、血糖や血圧、脂質など健康指標との関係でも研究が増え、健康法の一つとしても注目のテーマになっています。
今回参照する論文では、断続的断食に関するこれまでの研究結果が整理されており、体重の変化だけでなく、代謝や心血管リスクに関わる指標、概日リズム(サーカディアンリズム、体内時計)や腸内環境、アンチエイジング、寿命への影響など、複数の視点から断続的断食にどのような可能性が示されているかがまとめられています。
Review Article: Health Benefits of Intermittent Fasting
(PubMed Central掲載論文)
この記事では、この論文の内容をもとに、断続的断食でどのような効果が期待できるのかを整理しつつ、実践を考えるときに押さえておきたいポイントもわかりやすく解説します。
研究の概要
今回参照する論文は、断続的断食(intermittent fasting)に関する研究結果を集めて整理した論文です。特定の1つの試験結果を報告するものではなく、これまでに出ている複数の研究を横断して、どんな健康効果が報告されてきたかや、今後の課題についてまとめています。
また、この論文には人を対象にした研究だけでなく、動物実験で示唆された内容も含まれます。動物実験は仕組みを考える手がかりになりますが、そのまま人に当てはまると決めつけることはできないため、この記事でもそこは切り分けて読み解きます。
断続的断食とは?代表的な3つのやり方
断続的断食は、食事の内容を細かく変えるというよりも、「食べない時間」(断食する時間)をあらかじめつくる食事の考え方です。さまざまなやり方がありますが、論文で例として挙げられている代表的な方法は次の3つです。
まず「16:8ダイエット(16時間断食)」は、1日のうち食事をとる時間を8時間におさえ、残りの16時間は食べないという方法です。
「5:2ダイエット」は、週2日だけ食事量を大きく抑える日をつくり、残りの5日は通常に近い食事をとるという方法です。
「隔日断食」は、1日おきに断食日を入れる形で、制限日と通常日を交互に繰り返すという方法です。
このように、断続的断食にはさまざまな方法がありますが、負担の大きさがやり方によってかなり異なります。日常生活に取り入れるなら、まずは無理の少ない形から始め、続けられる形に調整していくようにしましょう。
続いては、この論文の内容に基づいて、断続的断食によってどのような効果が期待できるのかについて紹介していきます。
体重、血糖、血圧、脂質など、代謝まわりでの変化が多く報告されている
この論文で最も繰り返し触れられているのは、断続的断食が体重や代謝に関わる指標に影響しうるという点です。たとえば肥満や前糖尿病の人を含む研究では、体重の減少に加えて、空腹時インスリンやHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)といった血糖コントロールに関わる指標が改善したとする報告が整理されています。
別の論文でも、断続的断食が体重や脂肪の減少につながる可能性についての研究が紹介されています。
断続的断食で体重と脂肪はどれくらい減る?人を対象とした研究からわかること
断続的断食は毎日のカロリー制限より痩せる?研究レビューで見えた体重と体脂肪への影響
また、心血管リスクに関わる指標として、収縮期血圧(最高血圧)・拡張期血圧(最低血圧)が低下した研究、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が低下した研究があることも述べられています。こうした指標は体重変化の影響も受けやすいため、断続的断食の効果というより「食事の設計が整った結果」として捉えるほうが自然かもしれませんが、少なくとも複数の研究で良い方向の変化が報告されている、というのがこの論文の整理です。
さらにこの論文では、断続的断食はランダム化比較試験の整理において、減量や代謝改善の面でカロリー制限(摂取カロリーを一定割合で減らす方法)と同等の効果が報告されている、という点にも触れています。極端な方法で短期的に体重を落とすというより、続けられる範囲で食事のリズムを整えた結果として、代謝まわりの指標が改善する可能性があります。
食べる時間帯を早い時間に寄せると良い可能性がある
断続的断食というと「何時間食べないか」に注目が集まりやすいのですが、この論文では「食べる時間帯」も重要な論点として扱われています。
紹介されている研究の例として、食事をとる時間を8時間におさえ、そのうえで早い時間帯に食事を寄せる形(午後3時以降は食べない)と、同じ食事を12時間に分けてとる形を比べたものがあります。この比較では、早い時間帯に食事を寄せたほうで、食欲や血圧が低下し、糖尿病のリスクが下がる可能性が報告されたと述べられています。
食べる量だけでなく「食べる時間」を整えることが、体の反応に影響する可能性があるという点は、断続的断食を実践するときの考え方を少し変えてくれます。たとえば、同じ8時間の食事時間でも、夜遅くに寄せるより、早い時間帯に寄せるほうが食欲や血圧の改善につながりやすいかもしれません。
オートファジーの活性化や酸化ストレスの軽減など、アンチエイジングにもつながる可能性
断続的断食が注目される理由の1つに、体重や血糖の話だけでなく、老化や加齢に伴う不調との関わりが議論されていることがあります。
この論文は、断食に伴うカロリー制限(必要な栄養素は保ちながら摂取量を減らす方法)について、オートファジーの活性化を通じて慢性の変性・炎症性疾患の予防に関わる可能性があるということを紹介しています。オートファジーは、古くなったタンパク質や細胞内の構造物を分解して再利用する仕組みで、細胞の維持や再生に関わるとされます。
また、加齢とともに体内で酸化ストレスに関わる物質が蓄積しやすくなることが、さまざまな臓器の機能低下の一因になりうるという見方にも触れています。脳や心臓、骨格筋といった臓器は酸化ダメージが蓄積しやすいとされ、断食に伴うカロリー制限がこうした加齢関連の影響を軽減しうるという可能性にも触れています。
なお別の研究として、健康な若年成人では58時間の断食中に、有機酸や補酵素、抗酸化物質など複数の代謝マーカーが上昇したことが報告されています。こうした変化は、抗酸化防御やミトコンドリアの働きに関わる可能性があると論文では紹介されています。
人での報告としては、軽度認知障害のある高齢者で、36か月の断続的断食によって抗酸化に関わる酵素(SOD)の活性が上がり、酸化ストレスが低下する可能性が示された、と述べられています。断続的断食が「健康寿命」の観点で語られる背景には、こうした酸化ストレスや細胞の防御機構に関する議論があります。
なお、この論文では、がん領域についても、主に動物実験や一部の研究をもとに、断食が治療反応や副作用に関係しうる可能性に触れています。ただし、ここは研究の蓄積がまだ途上であり、一般の人が自己判断で断食を医療目的に用いるような話ではありません。
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