コーヒーとカフェインと健康の関係。「1日3〜5杯程度」が鍵かもしれないという研究

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コーヒーは体に悪いのか、それとも健康に良いのか。こうした議論はずっと続いてきました。カフェインで眠れなくなる、胃に負担がかかるといった不安がある一方で、「コーヒーは長生きに良い」「コーヒーはアンチエイジングにつながる」という話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回取り上げるのは、世界的に権威の高い医学誌『The New England Journal of Medicine』に掲載された、コーヒーと健康に関する大規模な研究結果をまとめた論文です。心臓や血管の病気、糖尿病、肝臓の病気、がん、さらには寿命との関係まで、これまでの多くの研究を整理し、コーヒーと健康の全体像についてできるだけ客観的に示そうとした内容になっています。

Coffee, Caffeine, and Health
(The New England Journal of Medicine掲載論文)

この論文を読み解いていくと、多くの人にとって、コーヒーは必ずしも控えるべき飲み物ではなく、むしろ「1日3〜5杯程度」までの範囲であれば、心血管疾患や死亡リスクが低い傾向と結びついていることがわかります。ただし、だからといってコーヒーをたくさん飲めば飲むほど健康に良いという話ではありませんし、妊娠中の方や不眠・不安が強い方など、注意が必要なケースもあります。

本記事では、この論文の内容をもとに、コーヒーと健康の関係をわかりやすく整理しながら、「どのくらい」「どんな飲み方」であれば、日々の生活の中で無理なく取り入れつつメリットを期待できるのかを考えていきます。コーヒーをやめるべきなのか、それとも上手に付き合っていけばよいのか。エビデンスに基づいた視点から、一緒に見ていきましょう。

研究の概要

今回の論文は、これまでに発表されてきた多くの研究をもとに、コーヒーとカフェインが人の健康にどう関わっているのかについてまとめて整理した内容となっています。心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患、2型糖尿病、肝臓の病気、がん、パーキンソン病やうつ、自殺リスク、そして死亡リスクまで、さまざまなテーマが扱われています。

コーヒーに含まれるカフェインの働きや、カフェインを含む他の飲み物・食品についても触れながら、眠気や集中力、睡眠、不安感など、日常生活の中で多くの人が実感しやすい影響についても整理されています。さらに、カフェイン入りのコーヒーと、カフェインを抜いたコーヒー(デカフェ)の両方が検討されており、カフェイン以外の成分が関わっている可能性にも言及されています。

論文の中では、数多くのコホート研究や、一定条件のもとで比較する介入研究などが引用されています。それぞれの研究結果を個別に評価するのではなく、全体としてどのような傾向が見えてくるのかを冷静に眺めながら、コーヒーは本当に体に悪いのか、それとも一定の範囲ならむしろプラスに働きうるのかを検討しているのが特徴です。

また、この論文はコーヒーの良い面だけを強調しているわけではありません。コーヒーを飲み過ぎた場合や、不眠や不安との関係、妊娠中のカフェイン摂取に伴うリスクなど、注意が必要なポイントについてもバランスよく整理されています。この記事では、こうした全体像の中から特に知っておきたい部分を取り上げて紹介します。

コーヒーとカフェインの基本的なはたらき

この論文ではまず、コーヒーの主な有効成分としてカフェインに注目し、私たちが日常的にどのくらい摂っているのか、その目安を示しています。アメリカのデータでは、成人の約8〜9割が毎日カフェインを摂取しており、平均摂取量は1日あたり約135mg、標準的なコーヒーカップ約1.5杯分に相当すると報告されています。

コーヒーにおいては、一般的な8オンス(約240ml)のドリップコーヒー1杯でおよそ90mg前後、インスタントコーヒーではそれより少なめ、エスプレッソ1ショットでもインスタント1杯と同程度のカフェインが含まれます。

体に入ったカフェインは、45分以内にほぼ吸収され、血中濃度は摂取後15分〜2時間ほどでピークに達します。その後ゆっくり分解され、健康な成人ではおおよそ2.5〜4.5時間ごとに半分ずつ減っていくイメージです。ただし、代謝のスピードには個人差が大きく、同じ量を飲んでも「よく眠れなくなる人」と「あまり影響を感じない人」がいるのは、この違いによるものと考えられています。

カフェインは脳に入り、眠気を引き起こすアデノシンという物質の働きを妨げることで、眠気を抑え、注意力や集中力を高めます。単調な作業や長距離運転、夜勤などのときに、眠気を和らげてパフォーマンスを維持する効果があることも報告されています。また、頭痛薬などに少量のカフェインを加えることで、痛み止めの効き方がわずかに良くなるというデータもあります。

一方で、こうした覚醒作用は裏を返せば、遅い時間帯の摂取で睡眠の質を下げたり、敏感な人では動悸や不安感につながったりする可能性があります。どのくらいの量・どの時間帯までなら自分にとってちょうどよいのかは、体質や生活リズムによって変わります。
続いては、こうしたカフェインの作用もふまえながら、コーヒーが心臓や血管、寿命とどのように関わっているのかを見ていきます。

1日3〜5杯のコーヒーと、心臓や寿命との関係

コーヒーについては、かつて「体に悪いのではないか」という不安も語られてきました。今回の論文では、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患とコーヒーの関係について、多くの追跡研究の結果が整理されています。その結論として、フィルターで入れたカフェイン入りコーヒーを1日あたり最大6杯程度まで飲んでいる人は、コーヒーを飲まない人と比べて、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが高くなるという証拠は見つかっていません。

むしろ、コーヒーを飲む人のほうが、心血管疾患のリスクが低い傾向が一貫して報告されています。いくつかの大規模研究をまとめると、心臓や血管の病気に関して最もリスクが低かったのは、おおよそ1日3〜5杯のコーヒーを飲んでいる人たちでした。コーヒー摂取量がこの範囲にある人では、冠動脈疾患や脳卒中、心血管疾患による死亡との間に逆相関が見られ、つまりはコーヒーを飲んでいる人ほどそれらの疾患のリスクが低いという関係が見られたとされています。

一方で、すべてのコーヒーが同じというわけではありません。フィルターを通さずに淹れるトルコ式や北欧の煮出しコーヒーなどでは、カフェストールなどの成分がろ過されずに多く残り、血中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を上昇させることがランダム化試験で示されています。1日あたり6杯程度の未ろ過コーヒーを飲んだ場合、LDLコレステロールが約18mg/dL程度上昇し、それに相当する心血管疾患リスクの増加が推定されています。一方で、ペーパーフィルターを通したコーヒーでは、同じようなコレステロール上昇は見られていません。

寿命との関係についても、似た傾向が報告されています。複数のコホート研究をまとめると、1日2〜5杯程度のコーヒー摂取は、全死亡リスクの低下と関連していました。ヨーロッパ系、アフリカ系アメリカ人、アジア系など、異なる人種背景の集団でも、同じような結果が得られています。5杯を超える摂取量でも、喫煙などの影響を統計的に調整したうえでは、コーヒーを飲まない人と比べて死亡リスクが高くなるというよりも、同程度か、むしろ低いレベルにとどまっていました。

興味深い点として、このような全死亡リスクの低下は、カフェイン入りコーヒーに限らず、デカフェコーヒーでも同じように見られたという報告があります。このデータは、コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分も、長期的な健康との関わりに寄与している可能性を示唆しています。

こうした結果をまとめて、この論文は成人におけるカフェイン入りコーヒーの摂取は、心血管疾患やがんのリスクを高めるという証拠は乏しく、むしろ1日3〜5杯程度のコーヒー摂取は、いくつかの慢性疾患のリスク低下と一貫して関連していると結論づけています。ただし、これらはあくまで観察研究を中心としたデータであり、コーヒーが直接寿命を延ばすと証明されたわけではありません。

喫煙や生活習慣など、すべての要因を完全に取り除くことは難しいため、その点をふまえたうえで、ほどほどのコーヒーは、少なくとも心臓や寿命にとって大きなマイナスではなさそうであり、むしろ健康に良い影響が期待できるといったように理解しておくのがよさそうです。

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