ビタミンCが配合された化粧水やサプリメントは、ドラッグストアやECサイトでもすっかり身近な存在になりました。肌のためにビタミンCが重要であることは広く知られていますが、「食べ物からビタミンCを十分にとることで、実際に肌の状態にどのような変化が生じるのか」については、具体的なイメージを持ちにくい方も多いのではないでしょうか。
本記事で取り上げるのは、皮膚科学分野の主要な査読付き学術誌の一つである『Journal of Investigative Dermatology(JID)』に掲載された論文です。
この論文は、血中ビタミンC濃度がやや低めの成人を対象に、ビタミンCを多く含むキウイフルーツを毎日摂取してもらい、血液と皮膚中のビタミンC量、さらに皮膚の状態の変化を詳細に評価した臨床試験についてまとめたものです。この研究を通じて、食事からとったビタミンCがどの程度まで肌に届き、どのように肌の変化が見られたのかを検証しています。
Improved Human Skin Vitamin C Levels and Skin Function after Dietary Intake of Kiwifruit: A High-Vitamin-C Food
(Journal of Investigative Dermatology掲載論文)
この記事では、この臨床試験で確認された結果と、現時点ではまだ断定できない点の両方を整理しながら、食事由来のビタミンCと肌の状態との関係について、論文エビデンスにもとづいてわかりやすく解説していきます。
研究の概要
この論文で中心的に扱われているのは、ビタミンCがやや不足している人が、ビタミンCを多く含む果物を毎日食べ続けたときに、血液と肌の状態がどう変化するかを調べた臨床試験です。
対象となったのは、血中ビタミンC濃度が十分とはいえない成人で、ニュージーランドとドイツの施設で合計24名が参加しました。参加者には、ビタミンCを豊富に含むサンゴールドキウイフルーツを1日2個、8週間にわたって摂取してもらいました。キウイ2個で、おおよそ1日250mg前後のビタミンCを食事からとる計算になります。
研究チームは、試験前と8週間後に血液検査と皮膚のサンプル採取を行い、血液中と皮膚中のビタミンC濃度を測定しました。あわせて、超音波による皮膚の密度の評価や、顕微鏡で表皮の細胞の入れ替わりの指標を確認するなど、いくつかの肌機能の指標も調べています。
つまりこの研究は、ビタミンCを多く含む果物を毎日とり続けることで、血液だけでなく肌そのもののビタミンC量や、肌の構造・働きにどの程度の変化が見られるのかを、人で直接確かめようとした試験といえます。
食事からとったビタミンCで血液と肌はどう変わったか
キウイフルーツを使った臨床試験では、まず血液中のビタミンCがしっかりと増えていることが確認されました。試験前はビタミンCが不足気味だった参加者が、1日2個のサンゴールドキウイを8週間続けて食べることで、血中ビタミンCは十分な水準まで上昇しています。
こうした変化は血液だけにとどまらず、肌にも反映されていました。皮膚の一部を採取してビタミンC量を測定したところ、キウイを食べる前と比べて、皮膚中のビタミンC濃度が有意に高くなっていました。血液中のビタミンCが上がった人ほど、皮膚中のビタミンCも増えているという関係が見られたことから、食事からとったビタミンCが血液を通じて肌にも取り込まれていると解釈できます。
ビタミンCが増えたことで、肌の性質にもいくつか変化が見られました。超音波検査を用いて評価した皮膚の密度は、キウイ摂取前よりも高い値を示しており、肌の内側の状態が改善したことがうかがえます。また、表皮の細胞の増え方を示すマーカー(Ki-67)の染色が強くなっており、表皮の細胞の入れ替わりが活発になっている可能性も示されました。
一方で、すべての指標が大きく改善したわけではありません。紫外線を当てたあとの酸化ストレスの指標や、コラーゲン産生のマーカーについては、試験前後で明確な差は認められていません。このことから、今回のような条件では、肌のビタミンC量や皮膚の密度、表皮の細胞の入れ替わりには変化が見られたものの、弾力性やコラーゲン量のような分かりやすい変化までは確認できていない、と整理するのが妥当です。
まとめると、ビタミンCが不足している人では、ビタミンCを多く含む食品を毎日とることで、血液と肌のビタミンCが実際に増え、皮膚の密度や表皮細胞の入れ替わりといった一部の肌機能が改善したというのがこの研究で押さえておきたいポイントです。
ただし、この研究は対照群のない前後比較であり、また参加者も少数のため、変化の原因をキウイ(ビタミンC)だけに断定することや、誰にでも同じ効果が出ると必ずしもいえない点は留意が必要です。
毎日の食事でビタミンCをとるときのヒント
この研究が示しているのは、特別な美容法などよりも前に、食事からのビタミンC摂取が肌の状態に関わりうるという視点です。重要なポイントは、ビタミンCをとにかくたくさんとればよいというよりも、まずは不足しない状態をつくることにあります。
試験では、血中ビタミンCが低めだった人が、ビタミンCを多く含む食品を一定期間とることで、血液と皮膚のビタミンCが増え、肌の一部の指標に変化が見られました。ここから日常生活に落とし込むとすれば、「ビタミンCが不足していそうな人ほど、食事を見直す意味が大きい」といえるでしょう。
実践の工夫としては、難しいことを考える必要はありません。まずは、ビタミンCが多い果物や野菜を、毎日の食事のどこかに一つ増やすところから始めるのが現実的です。キウイはその一例ですが、他にも柑橘類やいちご、パプリカ、ブロッコリーなど、ビタミンCを多く含む食品はいくつもあります。日常的にとりやすいものを選ぶことが、続けやすさにつながります。
一方で、食事からのビタミンC摂取を肌のために活かすなら、外側からの対策を軽視しないことも重要です。ビタミンCは紫外線による酸化ストレスに関わる可能性が示されていますが、今回の試験条件では紫外線に対する反応がはっきり改善したわけではありません。肌を守る基本は、日焼け止めや衣類、帽子などの紫外線対策であり、食事はその土台を内側から支える位置づけで考えるのが無理がありません。
また、野菜に含まれる成分が紫外線の影響を軽減し、老化予防につながる可能性があるという研究もあり、こちらも要注目です。
もう一つ意識したいのは、サプリメントとの付き合い方です。食事で補える範囲であれば、まずは食べ物からビタミンをとるのが望ましいですが、忙しくて果物や野菜が不足しがちな人は、必要に応じてサプリメントを使う選択肢もあります。ただし、サプリメントは食事の代わりになるものではなく、あくまで不足を補うためのものとして捉える方が安全です。
「肌のために何かを始めたい」と思ったとき、いきなり高価なアイテムに飛びつく前に、まずはビタミンCを豊富に含む果物や野菜を一品増やす。今回の研究は、そうしたシンプルな選択にも一定の根拠があることを示していると言えます。











