脳の記憶や認知の改善に関する示唆も
断続的断食は「体重や血糖」の話として語られがちですが、この論文では脳や認知機能に関する研究にも触れています。
具体的には、断食が認知機能の低下を遅らせる可能性や、海馬に関わる記憶(いわゆる記憶の中枢の一部)を改善する可能性、さらにアルツハイマー病の進行を遅らせる可能性が示されています。一方で、こうした効果の根本的な仕組みはまだ十分に解明されていないとも記載されています。
断食中は、体に蓄えられた糖が減ってくると、脂肪を分解してケトン体を作り、それをエネルギーとして使う比重が高まります。脳でも、断食中はケトン体が重要な燃料の一部になり得るとされています。また、代表的なケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)は、免疫細胞での炎症反応を抑え、加齢に関連した炎症を減らす可能性が示されています。
こうした仕組みが、断食の健康効果の一部に関わっている可能性があります。
腸内環境の変化や、代謝や炎症に関わる可能性
この論文では、断続的断食の影響を考えるうえで、腸内環境も重要な論点として取り上げられています。断食や食事のリズムが変わると、腸内細菌叢(腸内フローラ)が変化し、その変化が代謝や炎症反応に関わる可能性があると述べられています。
腸内細菌叢は、食べたものの分解に関わるだけでなく、短鎖脂肪酸などの代謝物を通じて体の状態に影響することが知られています。論文は、断続的断食が腸内細菌叢の構成を変えうること、そして腸内細菌叢を介して体重や代謝の変化に関わる可能性があることを、これまでの研究をもとに整理しています。
また、動物実験の報告として、隔日断食が脂肪組織の性質に関わる可能性が示唆された研究なども紹介されています。こうした話は、人で同じように起きると断定する段階ではありませんが、断食による腸内環境の変化が、体の燃え方や炎症の起こりやすさに影響するかもしれないという発想自体は、断続的断食に対する理解を深めるうえでのヒントになります。
断続的断食を始めるなら、まずは無理のない形から
断続的断食は、やり方を工夫すれば日常に取り入れやすい一方で、最初から強い制限にすると続きにくくなります。まずは無理なく続けられる形を優先して、負担の少ない形からスタートを切るのが望ましいでしょう。
たとえば、時間制限のある16:8ダイエット(16時間断食)などの方法なら、いきなり食事時間を大きく削るのではなく、夜遅い食事を少し早め、自然に「食べない時間」を伸ばすというところから始めてみるのがおすすめです。食事の時間帯については、早い時間に寄せたほうで食欲や血圧、糖代謝に関わる指標が良い方向に動いたという報告もあり、夜を軽めにして朝〜昼に寄せる発想は実践のヒントになります。
また、体重や代謝指標の改善が報告されているとはいえ、断続的断食は魔法の方法ではありません。極端に食事量を減らすよりも、食事の質を崩さずに「食べる時間の枠」を整えるほうが、結果として安定しやすいと考えられます。
断続的断食における注意点
断続的断食は、合う人にとっては取り入れやすい方法ですが、体調や状況によっては負担になりやすい側面もあります。まず前提として、持病がある人や薬を使っている人、妊娠中・授乳中の人、成長期の人などは、自己判断で食事の制限を強めないほうが安全です。体調に不安がある場合は、医療者に相談したうえで検討するようにしましょう。
また、断食時間を伸ばすほど効果が強まるとは限りません。続けるうちに、強い空腹によるストレスや、反動での過食が起きれば、結果としてうまくいかなくなることもあります。まずは無理のない範囲で始め、体調や睡眠、集中力などの変化を見ながら調整することが大切です。
もう1つ大事なのは、「断食しているから大丈夫」と考えて、食事の内容が崩れてしまうケースです。断続的断食は食べる時間の設計ですが、健康効果の多くは体重や代謝指標の変化と関係しています。食事の質が大きく乱れると、期待される方向の変化につながりにくくなるため、食べる時間の中で栄養バランスをしっかり保つ意識は残しておくようにしましょう。
なお、この論文では、断続的断食は多くの人にとって概ね安全とされつつも、頭痛、めまい、吐き気、脱力感などの軽い副作用が起こり得る点に触れています。
特に注意したいのは薬との関係です。断食療法を開始する際、降圧薬を使用している人では、症候性の低血圧や低ナトリウム血症が起こり得るため、薬の減量や中止が必要になる場合がある、と記載されています。
また、論文では「長期のエビデンスに基づく臨床試験が必要」とも述べています。
そのため、断続的断食は万能な方法として安易に断定せず、体調や目的に合わせて慎重に取り入れることが重要です。
断続的断食の健康効果についてのおさらい
この論文では、断続的断食が体重や血糖、血圧、脂質といった代謝や心血管リスクに関わる指標の改善につながる可能性が報告されています。加えて、食事の時間帯を早いほうに寄せることで、食欲や血圧、糖代謝に関わる指標が良い方向に動いたという研究の例も挙げられています。
また、アンチエイジングの観点では、オートファジーや酸化ストレスに関する議論、脳や認知に関する示唆、腸内環境を介した可能性など、断続的断食が幅広いテーマで研究されていることも読み取れます。
ただし、効果の出方は人や条件によって幅があり、長期の大規模な検証はまだ十分とは言えない点も論文では課題として触れられています。
断続的断食を試してみる場合は、まずは極端な方法ではなく、夜の食事を少し早めるなど「食べる時間」を無理のない範囲で整えるところから始めてみるのが良いでしょう。
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