睡眠時間を削ってでも運動の時間を確保したり、食事管理だけを徹底したり。ダイエット中ほど、睡眠が後回しになりがちです。しかし近年の研究を整理すると、寝不足は体の仕組みとして食欲や間食を増やしやすくし、結果として減量の進みを鈍らせる可能性が示されています。
今回取り上げるのは、睡眠不足が体重や減量にどのように関わりうるかを、これまでの研究結果をもとに整理した論文です。睡眠が不足すると、摂取カロリーが増えやすいこと、とくに脂質や炭水化物が多い間食が増える傾向が報告されていること、そして睡眠時間を延ばした人で摂取カロリーが減った例があることなどがまとめられています。
Sleep Deprivation: Effects on Weight Loss and Weight Loss Maintenance
(PubMed Central掲載論文)
ダイエットの基本である食事と運動に加えて、睡眠という土台をどう扱うと減量にプラスになりそうか。この記事では、研究が示しているポイントをわかりやすく整理し、今日からの生活に落とし込める形で解説します。
研究の概要
今回の論文は、睡眠不足と体重の関係について、これまでに報告されてきた研究結果をまとめて整理したものです。対象としているのは、普段の睡眠が短い人ほど体重が増えやすいのかという観察データに加えて、実際に睡眠時間を短くしたり、逆に長くしたりしたときに、食べ方や体重の変化がどう動くのかを調べた研究です。
この論文では特に、睡眠の変化が「食事量」「間食」「食べたくなる気持ち」といった日常の行動にどう影響しうるかに焦点が当てられています。つまり、睡眠を減らすことが直接脂肪を増やすというよりも、睡眠不足が続くことで食行動が変わり、その積み重ねが体重管理に影響していく可能性があるという考え方です。
また、睡眠時間の目安として、成人では1日7〜9時間が推奨されるという一般的な考え方にも触れられています。
睡眠不足だと食べる量が増えやすい
この論文でまず強調されているのは、睡眠不足が続くと「食べる量」が増えやすいという点です。ここで重要なのは、ただ空腹になるというより、食べ方そのものが変わりやすいことです。
具体的には、睡眠が短い状態では、1日の摂取カロリーが増える傾向が報告されています。さらに、増えやすいのは食事そのものよりも「間食」で、とくに脂質や炭水化物が多い食品に手が伸びやすくなるという整理がされています。
つまり、寝不足のときに「つい甘いものやスナックをつまんでしまう」「夜遅い時間にこってりしたものが食べたくなる」といった行動は、個人の意思の弱さの問題というよりも、寝不足のときに広く見られる傾向として報告されている、ということです。
また、食欲に関わる体内の反応として、睡眠不足で空腹感が強まり、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えた研究があることにも触れられています。
もちろん、ホルモンだけですべてが決まるわけではありませんが、寝不足が「食べ過ぎやすい状態」をつくる要因になりうるということを認識しておくことは重要でしょう。
ダイエットは、結局のところ摂取カロリーの積み重ねで結果が決まります。睡眠不足が続くと、本人はいつも通りのつもりでも、間食が増えて総摂取カロリーが押し上げられやすい。この点が、寝不足が減量の進みを鈍らせる理由として、まず押さえておきたいポイントです。
寝不足で脂肪が落ちにくくなることがある
寝不足がダイエットに影響するのは、食べる量が増えやすいからだけではありません。この論文では、食事を制限して減量に取り組んでいる状況でも、睡眠が短い場合、体重は減っていても脂肪の減り方が鈍る可能性があることが整理されています。
例えば、食事制限とあわせて睡眠時間を短くした条件では、脂肪として減った量の割合が小さくなり、逆に筋肉などの除脂肪量が減りやすかったという結果が報告されています。
別の試験でも、体重や体組成の全体としては大きな差が見えにくい一方で、脂肪として落ちた量は睡眠を削らなかった群のほうが大きかった、という整理が示されています。
体重計の数字だけ見ていると気づきにくいのですが、寝不足が続くと「減らしたいのは脂肪なのに、体重の減り方が理想とずれる」ということが起きうる、というのがここでのポイントです。ダイエット中に睡眠を削りたくなるほど忙しい時期ほど、睡眠を軽視しないほうが結果につながりやすい、という示唆になります。
睡眠時間を増やすと食べすぎが減る可能性がある
この論文では、寝不足を減らすことがダイエットにどう影響しうるかについても紹介されています。興味深いのは、短かめの睡眠が習慣になっている人を対象に、睡眠時間を延ばすようサポートした試験で、1日の摂取カロリーが平均して約270kcal少なくなったという結果が報告されている点です。
ここで押さえておきたいのは、運動量を増やしたわけではなくても、睡眠を確保することで食べる量が自然に下がる方向に動いた可能性が示されたことです。実際、その試験では消費カロリーのほうは明確な変化が確認されていません。つまり、睡眠を延ばすことが減量にプラスに働くとすれば、その中心は「消費を増やす」よりも「摂取カロリーが増えすぎない状態をつくる」ことにある、と整理できます。
寝不足を減らすだけでも、ダイエットは進みやすくなる
ここまで見てきた研究の整理からは、睡眠不足が続くと摂取カロリーが増えやすく、とくに間食が増える方向が示されています。
さらに、減量中でも睡眠が短いと、脂肪が落ちにくくなる可能性が示された試験もあります。
逆に、睡眠が不足気味の人が睡眠を延ばすようにすると、1日の摂取カロリーが減った例も報告されています。
日常で意識したいのは、睡眠を完璧にすることではなく、寝不足を当たり前にしないことです。成人では1日7〜9時間が目安とされており、まずは30分でも睡眠時間を増やすだけで、食べ方が整いやすくなる可能性があります。
この論文では、人工照明や電子機器の普及が睡眠時間の短縮に関わってきた背景にも触れられています。寝る直前までスマホやPCを見続ける習慣がある場合は、就寝前の過ごし方を見直すだけでも睡眠を確保しやすくなりますので、注意するようにしましょう。
減量のために食事や運動を頑張るほど、睡眠が削られがちですが、睡眠はその努力を支える土台です。まずは夜ふかしのきっかけを一つ減らすところから始めると、続けやすくなります。
なお、睡眠と体重の関係は一方向ではなく、体重や生活習慣が睡眠に影響することもあり得るため、睡眠だけで結果が決まるわけではありません。
それでも「睡眠を削らない」という選択が、ダイエットを遠回りにしないための実用的な一手になり得ることは、この論文が示している大事なポイントです。











